難民事業本部(RHQ※1)では、難民定住者とその家族、難民認定申請中の方からの相談に対して情報提供や助言など、相談者の問題解決と自立した生活に向けての支援を行っており、名古屋国際センターにおいて毎月2回、第2・第4木曜日に、名古屋相談窓口を設けています。この地域に暮らす難民および難民認定申請中の方々の置かれている状況について、RHQ関西支部所長の中尾秀一さんにお話をうかがいました。
難民とは
難民についての最も基本的な国際的ルールである「難民の地位に関する条約」(1951年採択。以下、「難民条約」)によると、難民とは「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるという十分に理由のある恐怖のために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者又は受けることを望まない者及び常居所を有していた国の外にいる無国籍のものであって、その国に帰ることを望まない者」とされています。加えて、戦争や政治の混乱によって生命・身体の危機から国を出た避難民と呼ばれる人たちも広い意味で難民と呼ばれることがあり、世界には約4,330万人の難民がいると言われています。
日本に暮らす難民
日本は1978年から2005年まで、11,319人のインドシナ難民(※2)を受け入れてきました。1982年には難民条約に加盟し、難民認定制度を設け、難民認定申請者に対して個別に審査を行い、法務大臣が難民として認定した人々(条約難民)も生活しています。また、難民認定を得られなかったものの、人道的配慮により在留が認められた人もいます。
日本政府は、2010年から、難民キャンプ等で一時的な庇護を受けた難民を新たに受入れに合意した第三国へ移動させる第三国定住をパイロットケースとして始めました。受け入れの対象はタイの難民キャンプに滞在するミャンマー族。年間約30人を3年間継続して受け入れる予定です。
RHQ名古屋相談窓口から
国内に暮らす難民の多くは、支援機関の拠点がある関東と関西に暮らしていますが、この地域にもベトナムから来たインドシナ難民やミャンマー(ビルマ)人などの難民認定を受けた人、難民認定申請中の人などが暮らしています。名古屋相談窓口に来る人は難民認定申請中の人が多く、その出身国は様々です。
難民認定を申請すると結果が出るまで平均して約2年の年月を要します。在留資格がない場合が多いため、働くことができず、日本人と同様の社会保障を受けることができません。難民認定申請中で経済的に困窮している場合は、生活費や住居費、医療費が政府から支給されますが、日本で生活していくには様々な困難があります。在留資格がないことから住宅を借りることが難しかったり、健康保険がないことから病院で受診できなかったり、日本人が当たり前にできることが、簡単にできないことがあります。
申請者の中には、家族と離れて生活していることから孤独を感じたり、母国での経験からトラウマを抱えたりして、精神的に不安定になったり、ストレスを感じている人もいます。
RHQ関西支部の中尾さんは、「まず世界にはたくさん難民がいるということを、そして、日本にも1万人以上の難民が暮らし、私たちの身近にも住んでいるということを知ってほしい。そして、自分の意志ではなくやむを得ず国を離れて日本で暮らしている人がいるということを理解してほしい」と話しました。
※1 Refugee Assistance Headquarters。日本政府から委託を受け、日本に定住するインドシナ難民と条約難民等(難民定住者)の定住促進のため、日本語の基礎教育、日本の社会制度や生活習慣に関するガイダンスや就職のあっせん、生活相談などの支援事業を行っている。(http://www.rhq.gr.jp)
※2 1975年、インドシナ三国(ベトナム・ラオス・カンボジア)が社会主義体制に移行した際に、新しい体制の下で迫害を受けるおそれがある、新体制になじめないなどの理由から国外に逃れた人々。